日本経済がデフレに陥っている最大の要因は、30兆円もの需要不足です。
需要が足りないうえ、政府予算の公共事業の削減が加わって、疲弊した地方経済への影響は特に大きいものがあります。
未来に向けて必要な公共投資は、まだ多くあります。
公共投資は即効性が高く、地方の景気下支えにもなります。
ムダを排除するのは当然ですが、公共投資すべてを罪悪視するのでなく、必要なインフラ(社会基盤)投資を見極め、着実に行っていくことこそが政治の責任です。
例えば、学校の耐震化があります。
全国の公立小中学校の建物で、地震により倒壊の危険性があるものは2009年度補正予算執行後でも約2万5000棟に及びます。
しかし、2010年度予算では約2200棟分(1032億円、沖縄除く)が計上されたにすぎません。
地震列島の日本で、今も多くの子供たちが危険にさらされています。
耐震化を急げば、安心が得られるだけでなく、地方経済の活性化にもつながります。
整備新幹線の建設中の区間や高速道路の細切れ区間の建設を急ぎ、総合的な交通体系を整備することも重要です。
整備新幹線や高速道路は全体がつながって初めて経済効果を発揮します。
国際空港やスーパー中枢港湾の整備も、産業の国際競争力を高めるために急ぐ必要があります。
世界の空港の航空貨物取扱量をみると、成田は2000年にはメンフィス(米国)、香港(中国)、ロサンゼルス(米国)に次いで4位でしたが、2008年には上海(中国)、仁川(韓国)などに抜かれ、8位に転落しました。
世界の主要港湾の取り扱いコンテナ数でも、1994年には横浜が10位、東京が15位だったが、2008年には東京が24位、横浜が29位と地盤沈下が激しくなっています。
国際空港は、成田の発着枠に限界があります。
羽田に4本目の滑走路を整備する再拡張事業を急がなければなりません。
東京港などスーパー中枢港湾に、アジア主要港をしのぐ次世代高規格コンテナターミナルを設ける計画も加速させるべきです。
道路や橋、港湾など高度成長期に整備されてきたインフラは今後、急速に高齢化します。
建設後50年以上たつ道路や橋は2006年には6%でしたが、2026年には47%になる見通しです。
今後、維持管理費の急速な増大は避けられず、国土交通省の試算では、国・地方のインフラ投資額が2005年度の水準(約14兆円)を維持した場合でも、投資額に占める維持管理費の割合は2030年には6割以上に増えます。
大胆な新規投資は今しかできないのです。
戸川利郎
参考:http://www.aspnet-japan-solidarity.asia/